アブストラクト


「すばるが切り開く天文学」   家 正則 (国立天文台・三鷹)

すばる望遠鏡は1998年末ファーストライト、以後2000年3月まで 望遠鏡の調整、7つの共同利用装置の立ち上げを行い、2000年度からは 一部共同利用を開始する方向で関係者一同、鋭意努力中である。

すばる望遠鏡を用いた各観測装置の試験観測テーマなどについては、 各装置のサイエンスグループでの検討を踏まえて、装置責任者に 大型光学赤外線専門委員会での計画説明をしていただき、専門委員会として その基本路線について助言し了承を行う方針である。すでに望遠鏡性能を チェックするための試験観測装置群については、そのレビューを行った。

今回世話人からは、すばる観測装置群の説明ではなく、それらにより期待 される新しい天文学的成果や、新しい観測分野についての展望を述べよとの宿題を 戴いた。大変難しい宿題である。そもそも歴史が証明してきたように、真に新しい 発見や成果は事前の予測を越えたものであるという言い訳がすぐ頭に浮かぶ。 一方で、宇宙背景放射、重力レンズ、恒星震動、超新星、太陽ニュートリノ、 宇宙の化学進化、宇宙モデルの決定など理論的展望と最新の観測とが噛み合い、 科学としての議論が健全に発展している面白い分野が天文学ではいくつもある。 現在やや沈滞しているようにも見える研究分野がすばる望遠鏡など新しい観測装置の 登場で新しい局面を迎えるかもしれない。

先見性を持った展望を述べることは、とても私の力の及ぶところではないが、 個人趣味的・主観的な問題提起と展望を試みたい。


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